-STORY-


Alaska

銀色の世界とは ・ 「無」であった。
旅人はひとり ・ 「無」の中にいる。
旅人はすべてを置いてきた。
愛する人も ・ 時間も ・ お金も ・ 未来さえも。
白くまの声が聞こえる。悲しい声だった。
オーロラの下で ・ 旅人は氷の上に仰向けになり ・ ゆっくりと目を瞑った。
最後に ・ なにか呟いたが ・ それは誰にも ・ 聞こえなかった。
 



good night dream

少女は乾いていた。自分だけが正義だと思っていた。
少女の体には自分で決めた「悪」がどんどん増えていった。
空に浮かぶ夜は ・ 知っている。
世界は ・ 本当はカラフルであることを。
だから ・ 夜はそれをわざと少女の上にこぼした。
優しく ・ 少女が気付かないように ・ そっと
少女は ・ 穏やかな眠りに入りそうになって ・ だれかに「ありがとう」と言いたくなった ・自分に赤面した。
 



頑固者はドアの前で立ちすくむ

頑固者は ・ 自分に誇れるものを1つだけ持っていた。それは「まじめに生きる」ということだった。
頑固者は ・ 涙とは無縁だった。
ある時 ・ 頑固者は大きなドアに吸い込まれた。
見たこともない世界だった。色がたくさんあることを初めて知った。
そして ・ 頑固者が初めて「笑顔」という表情を得たとき ・ 目の前が急に暗くなり頑固者は自分によく似た声を聞いた。「Hellow, you know I am dead.」
死ぬことよりも ・ こわいことを知ってしまった。
恐怖の中で頑固者は ・ 母を思い出していた。
 



無題

私のことなど気しないでくれ。物事を難しく考える意味など ・ この世のどこにだって存在しない。
傷を縫った痕だって ・ 誰かに見せるためのものじゃないんだ。
( 目の前に ・ 灰色の君が現れる。緑がちっとも似合わない君が。)
そうだ ・ そんなことより ・ 私の最後の一滴まで ・ あなたにあげるから ・ どうかあなたの思いを教えてくれないか。
( 君は黙って頷く。私は自分のために生きる気など ・ これっぽっちも無かった。)
吸い込まれそうな透明な緑に任せて ・ 手を繋いで ・ 空を飛ぼう。
あなたは何も ・ 考えなくていい。
       

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